連載 「海の名前」 2024年3月号


〜 マングローブ 〜

マングローブは、熱帯や亜熱帯の河口にある汽水域の塩性湿地に植物群落や森林を形成する常緑樹の総称です。日本では沖縄県全域と鹿児島県南部に自然分布し、マングローブにのみ分布が限定される種は、メヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ヒルギダマシ、ヒルギモドキ及びニッパヤシなどで、これらは、マングローブの主要な構成種です。世界中のマングローブ林の総面積は約1,520万ヘクタールと推定されますが、マングローブ林の多くは開発による伐採、木炭の材料のため、エビ養殖場の開発、などで消滅しつつあります。マングローブ林は熱帯雨林などと同じように二酸化炭素を吸収し酸素を発生して地球温暖化を防止するばかりか、海の水質浄化に果たす役割が大きいと共に、底質に多くの有機物を含んで分解されずに蓄積し、マングローブ泥炭を生成するため二酸化炭素の吸収源として重要視されています。また、浅い海岸に生育して荒波から陸地を守るなど様々な役割を果たすため保護が求められています。マングローブとの言葉は「森林全体」と森林を構成する樹木の「種」を表す場合があり、前者を「マングローブ(林)」、後者を「マングローブ(植物)」と呼ぶのが一般的です。

<関連書籍>
「海の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真


河口のマングローブ

ヤエヤマヒルギ

マングローブ林





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