連載 「海の名前」 2025年12月号


〜 ウミショウブ 〜

恐竜時代の2億年以上前は陸上に生える植物でしたが、大きなシダ植物に太陽光が遮られないように、浅い海中で生息するようになった顕花植物です。ショウブを思わせる葉からウミショウブで、種小名acoroidesはショウブ属の学名Acorusにちなみます。インド洋から太平洋の熱帯・亜熱帯に分布し、日本では西表島、石垣島などで見られますが、アオウミガメによる食害により、絶滅が心配されています。春から夏の大潮の干潮時に開花し、雌花は花びらを広げて、雄花が流れてくるのを待ちます。同時期に雄花は海底近くで白い花をつけ、切り離されて水面に浮かび、花弁が反り返るように開き、高さ3mm程度の雪だるまやポップコーンのような形になり、風や潮に流され、水面上に開く雌花にひっかかり、受粉を完了する珍しい植物です。

<関連書籍>
「海の名前」(東京書籍刊)中村庸夫:著・写真


ウミショウブ

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